aida ha nani de dekiteiru ?

〈いかにしてワタシはこの本に出会ったか〉についての記録

江澤誠(2010)「地球温暖化問題原論 ネオリベラリズムと専門家集団の誤謬」

 

地球温暖化問題原論?ネオリベラリズムと専門家集団の誤謬

地球温暖化問題原論?ネオリベラリズムと専門家集団の誤謬

 

 ワタシの本来(笑)の関心対象である温暖化問題に関する書籍。

著者の主張は明確で、昨今の温暖化緩和重視(CO2削減)の諸政策(おもに経済的手法をもちいたもの)に対する批判と温暖化対策の静観、再考をうながすもののようだ。

 

ところで、いわゆる温暖化懐疑論の主張は主に、

  1. 地球温暖化現象批判/寒冷化論
  2. 人為的温暖化論批判/自然変動重視
  3. 温暖化悪影響批判
  4. 温暖化諸対策批判

などにおおまかに分類できる。実際の主張は当然多層的で、これらを因果的に組み合わせたものが多い。

 

日本における温暖化論争は2007-08年におおきな盛り上がりを見た。当時の傾向として、自然科学系を専門とする研究者は上記1,2をおもな論点とし、社会科学系の研究者・評論家は3,4をおもな論点としていることが多かったように思われる。

 

ところが2009年年末に英国・イーストアングリア大学・気候研究ユニット(CRU)の研究者間のメールのやり取りが不正アクセスにより流出するという事件が起こった。のちに"クライメート・ゲート(ClimateGate)"事件と呼ばれることになる事件である。批判者は研究者が不正にデータを改ざんしたと主張し、社会的な注目を集めるとともに、「主流」の気候科学者およびIPCCに対して懐疑的な意見が多く寄せられた。おりしもCOP15(気候変動枠組条約締結国会議)の直前という時期性もあって、「世紀の科学的不正事件」として、気候変動対策の根幹を揺るがすものと、世界中で大きく取り上げられるにいたった。

その後英国政府が第3者機関に依頼した監査の結果、実際には不正は存在しなかったことが明らかにされたものの、この事件によりIPCCという組織そのものに対する懐疑論がその後も多くみられるようになった。

つまりClimateGate以降、懐疑論には

5.IPCCという組織に対する懐疑論

というべき分類項が出現したといえる。ところが私見ではこのIPCCに対する懐疑論の多くはやや陰謀論めいたものであった感が否めなかった。

 

本書はいわゆる温暖化懐疑論のひとつと思われるが、たしかに「異色な」組織であるIPCCそれ自体に対して詳細な検討と批判を加えているという点でこれまでの諸論説とは異なるように思う。ネットで目次をチェックし、理工学図書館に貸出申請したという次第である。

参考文献もしっかりしているし(STS的知見も参考にされているようだ)、なかなか読みごたえのある本であるといえそうだ。