S.ローランド博士と日米放射化学研究
1995年のノーベル化学賞には、大気化学分野の功績から、クルッツェン氏、ローランド氏、モリーナ氏が選ばれた。ローランド氏とモリーナ氏は1974年にCFCによる成層圏オゾン破壊の反応機構理論を発表したことで著名だ。ローランド博士は大気化学の権威として認識していたのだが、放射化学会の学会誌を読んでいて、ローランド博士の追悼文を見つけて驚いた。なんとローランド博士はもともと放射化学の研究者だったそうなのだ。手元にある科学史読み物「大気の海」*1を読み返してみたところ、
ローランドは放射能に関する自分の研究に忙しかったし、学部の運営にも力を注いでいた。/p195
との一文があることに気付いた。この本でローランド博士の放射化学研究に言及しているのはこの部分だけである。覚えていなくても仕方ないか。笑
そんなわけで毎度のことながら唐突に連ツイしたのでまとめをば。
ほう、大気化学者S.ローランド博士は放射化学の研究者でもあったのか
— chlochro (@hakkirikuro) 2014, 2月 16
以下『』は、
"ローランド先生を偲んで"/富永健,放射化学ニュース,第26号,2012年10月,pp.47-49 http://t.co/mXyRBlNXxX
より引用
— chlochro (@hakkirikuro) 2014, 2月 16
『ローランド氏は、(中略) シカゴ大学の W.F.Libby教授(後に炭素 14 年代決定法の発見で 1960 年ノーベル化学賞受賞)に師事し、放射性臭素の有機ホットアトム反応の研究で1952年Ph.Dの学位を得た。』
— chlochro (@hakkirikuro) 2014, 2月 16
1959年、第3回放射化学討論会に急遽講演者の代役として参加することになったローランド氏は、来日後、各地の放射化学研究室を訪れ、氏と日本の放射化学研究者の交流が始まった。国内からローランド氏の研究室への留学も盛んに行われた。
— chlochro (@hakkirikuro) 2014, 2月 16
『当時すでに、氏はトリチウムなどのホットアトム化学を中心に核放射化学分野で活躍する物理化学者として著名であり、反応メカニズムなどをめぐってR.Wolfgang エール大学教授と学会でいつも激しい論争を展開していた。』
— chlochro (@hakkirikuro) 2014, 2月 16
『その後、巻出義紘博士、佐藤春雄博士をはじめ 4 名が留学しているが、1970 年代後半以降はローランド研究室では放射化学よりも大気化学の研究が主流になっていった』『静岡大、原研、東大、京大などから氏のグループに参加した研究者は十数名にのぼり、これらの分野での交流・協力に貢献』
— chlochro (@hakkirikuro) 2014, 2月 16
個人レベルでの交流に限らず、木村健二郎氏とローランド氏が日米代表を務めた1973年の第 1 回日米セミナー「放射化学的手法およびその応用における最近の進歩」(NSF・日本学術振興会主催)は、その後の日米間での組織的な放射化学研究協力の契機になった。
— chlochro (@hakkirikuro) 2014, 2月 16
『世界のホットアトム化学研究がピークに達した 1970 年頃には新たな展開が必要となって、ローランド教授も化学者の取組むべき新たな課題を求めて周辺分野にも関心を向けつつあった(師の Libby 教授からは、いつも「何か新しい
こと」に挑戦するように教えられていた)。』
— chlochro (@hakkirikuro) 2014, 2月 16
『大西洋上の大気中に極微量の人工物質 CFCを検出したというJ.E.Lovelockの報告が、ローランド教授に大気化学への第一歩を踏み出させた』『1973 年に氏のグループに新たに加わった博士研究員 Mario.Molinaとともに大気中でのCFCの挙動や寿命の研究に着手した』
— chlochro (@hakkirikuro) 2014, 2月 16
それにしても、改変後のtweet表示はあまり美しくないな
以前のシンプルな表示に戻せないものだろうか…
*1:大気の海―なぜ風は吹き、生命が地球に満ちたのか,ガブリエル ウォーカー (著), 渡会 圭子 (翻訳),早川書房,p.349, 2008.
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