aida ha nani de dekiteiru ?

〈いかにしてワタシはこの本に出会ったか〉についての記録

「議論慣れ」

先日、とある研究会に参加したときのこと。

ボクが通っている大学では、大学院で「副専攻」という試みをやっている。主専攻とは別に、異なる学問を専攻するものだ。副専攻には異なる研究科の院生が参加し、それぞれの専門性と異なる専門性とのコミュニケーションを主題としながら2年間で副専攻プログラムの修了を目指す。

そのなかに、「政策のための科学」という副専攻プログラムがある。簡単に言えば、科学技術社会論的な副専攻プログラムである。幸い、ボクが通っている大学には、日本のSTSの代表的な専門家が多く所属しているので、全国的に見ても、質の高い教育を受けることが出来そうだ。

残念ながらボクは学部生なのでこのプログラムを受講することはできないが、この副専攻プログラムは定期的に外部・内部から講師を呼んで講演会・研究会を開いている。これは基本的には受講生以外の学生も参加してよいらしいので、ボクもかねがね参加したいと思っていたのだけれども、その開催の日程とボクが受講している学生実験の日程がかぶってしまっているため、参加できないでいた。しかし最近、学生実験がいったん終り空コマができたところで、ちょうどよく研究会が開催されることになった。

今回の講師は法学研究科の先生で、行政法と環境法を専門にされていた。法学的なアプローチを用いた原子力リスク規制についての講演でとても勉強になった。特に印象に残ったことをメモしておく。

  • 理学と工学の問題への認識の違い
  • これとのアナロジーで行政法学と憲法学との見方の違い
  • リスク規制の枠組みは今後裁判のなかで形成されていくのではという見通し
  • 対抗的専門知の配置について、裁判官はどのように対応するのか

実はこの研究会の会場には当たり前のことだが、うちの大学のSTS研究者が参加していた。どちらの方も、ボクが著書を教科書として学んでいるような、いわゆる学界を代表する先生方だ。ボクのように普段独学でSTSをかじっている者からすると理想的な学習環境そのものであった。

さて、研究会も終わり、なんと帰り際に先生から声をかけていただき、この後に開催される忘年会へ誘っていただいた。副専攻プログラムを受講している院生の先輩方といっしょに部外者であるボクもなぜか流れで参加することができたのだ。

受講している院生の先輩方は理学研究科や工学研究科などのいわゆる"理系"が多かったが、このプログラムを受講しているだけあってみなさん社会問題への関心は高く、知識も持っておられるようだった。なにより感じたのは、「議論慣れ」である。

独学者として致命的なのは独りよがりに陥ることであると以前書いたが、ほかの人との議論のスキルを身に着けられないのも大きな欠点である。これはなにもディベートの能力が高いということを意味しているのではない。むしろ、発展的な議論を生み出し、続けられるようなスキルであるように思う。このような能力は、やはり日常的にさまざまなトピックについて議論をする訓練を受けなければ正しく身につかない。

無論、適切な知識量を身に着けることも必要だが、それを昇華するだけの議論スキルがいまのボクには必要だと強く感じたのだった。